Feature

Denim
Text:AKIRA SAEKI (Japan Jeans Association / Adviser) / Planning Editor:KEIJI MICHINO (roomservice)

Looking into the historical background of Japan's success in leading the world of denim.

日本のデニムが、世界をリードする歴史的背景を見つける。

キモノとしてのコットン

日本のキモノ素材といえば、大抵の人はシルクを思い浮かべるであろう。カラフルで袖の長いキモノを着て、古い街並みを歩くゲイシャや舞子さんの姿は、最も日本的なイメージである。それらの素材は間違いなくシルクであり、欧米人たちにとっての日本の魅力の重要な一部であった。だがシルクは日本のキモノ文化の一部に過ぎない。実は17世紀以降の統治者であるサムライたちは、少なくとも形式的にはシルクを嫌ったのだ。常に戦いを意識しなければならない彼らにとって、シルクの持つ贅沢さや価格の高さに我慢が出来なかったのだ。そこでシルクよりも手軽で安価なコットンを勧める法律を定めた君主も多かった。中下級のサムライ、江戸(東京)の町民たちの通常の衣服はほとんどがコットンであった。

しかし人々が持っている美や豪華さへの憧れまでも消し去ることは出来にくい。素材はコットンであっても、色合いや肌触りに優れ、そしてグラフィックな絵柄を工夫した多くの生地が考え出された。おびただしい種類の縞柄(ストライプ)、格子柄(チェック)そして江戸小紋などの捺染(プリント)の織物がシルクに負けずに考案された。そしてそれらのコットン織物のイメージは、今でも日本人の頭脳の中に遺産として残っている。

コットンを使った衣服の形もさまざまだった。吸水性に優れた風呂上り用の薄手のバスローブ「浴衣」から中綿で防寒用途の重たいものに至るまで種類は多かった。農民や大工が着る服には機能的な形が考案された。19世紀以前の江戸の町火消したちの防火服には厚くて丈夫なコットンが使われ、「刺し子」と呼ばれるキルト加工で頑丈さがくわえられた。

さてコットンの原料である「綿花」の栽培にふさわしいのはどんな場所かご存知だろうか?答えは「温暖で、日当たりが良く、降雨が適当な気候の土地」である。世界の綿花栽培にふさわしい場所は今でもそうである。日本では気候のよい西日本地域、特に岡山や広島地域がコットンの栽培や、染色、織物の生産に相応しい場所としてリード的な立場を勝ち取ったのだ。

藍染とカスリ

日本の伝統的なキモノと近代的なデニムを結びつけるキーワードは「藍(あい)染」と「絣(かすり)」である。これらの染めや織りの工程もやはり西日本で発達した。日本の藍染の本来の染料は蓼(たで)科の植物である。現在近代的化学工場で作られるインディゴ染料の成分は天然のものに似せられている。日本の伝統的な藍染の特色はその色相の多様さである。藍の染料壷に浸ける時間や回数などの工夫によって100種類以上の色相に染め分けることが出来る。日本人はその各々の色に優雅な名前までつけた。似通った植物や鉱物、中にはその色のキモノをきるサムライの役職名など100種類以上に及ぶ。「浅葱(あさぎ)」や「納戸(なんど)」などがその色名の例だ。現代の日本人若者たちがブルージーンズの色について少々うるさいのは、その伝統を受けついでいるからかもしれない。

代表的な「絣(かすり)」織物は経(たて)糸、横糸共に、糸の状態で染められる。だがその長い糸の一部が白く残されたり、他の赤などの色などに意図的に変化させられる。例えば長い紺色の糸の一部が白く残される。その部分が丁度、経(たて)と横方向で交差するクロス模様などの織物が農作業の時のボトムスや上着として、あるいは子供たちの普段着となって大きな需要を得ることが出来たのだ。ジーンズの原点はアメリカの労働着だ。日本の「絣(かすり)」も、働く人々に愛用された点で似通っている。1970年代アメリカ製のジーンズを見習って、日本でデニムを初めて作り始めたのは、200年以上にわたって藍染や絣織物の伝統を受け継いできた地方の人々だった。

「ウォッシュ」の話

さて最後はジーンズの「洗い加工」の物語である。日本でもヨーロッパと同じように、ジーンズは第二次大戦後に普及が始まった。アメリカ兵たちの「軍放出品」がその原点であった。それらはすでに着古されているし、何度も洗濯されている。当然柔らかくて風合いも良くなっている。当初日本人は、ジーンズはそんなものだと思っていた。だがいざデニム生地を輸入して、国産でジーンズを製造し始めてみると、ゴワゴワで硬いデニム生地に驚くことになる。長い間シルクや柔らかいコットンのキモノになじんできた繊細な日本人の皮膚には、硬いデニムは耐えがたかったのだ。こうして縫製後のジーンズを「洗う」、「色落ちさせる」、「中古感覚加工する」などの技術開発が他の国をリードすることになった。さらに「すすぎ」のための水資源の豊富なこと、火山国なのでストーンウォッシュ用の噴火の後の「軽石」を得やすかったことも背景にある。

このように日本のジーンズには、自然環境の適合性や天然藍による糸染めの技術、シルクとは異なる実用着としてのコットン衣服の普及などの歴史的事実がその背景にある。日本のデニム生地工場が、外観や風合いを重視して、オーソドックスなリング紡績方法やロープ染色工程にこだわっている。それは、シルクやコットンのキモノを大切に考えるDNA遺伝子のようなものが受け継がれているためとも言える。デニムは古い日本のキモノ文化や日本人の繊細さと関係がある。日本のデニムやジーンズへの期待は将来も続く。

ニュースや最新情報をお送り致します。バイヤー、ファッションエディター、スタイリストなどの業界関係者の方、是非ご登録ください!

We send new information and news.If you are fashion editor, stylist, buyer or in fashion bussiness, Please register.

join our mail magazinedelete

  • about this site
(C)H.P.FRANCE S.A.. all rights reserved.